2019年 11月の法話

『世界の平和のために』

38年前、カトリックのヨハネ・パウロ2世が来日された折り、比叡山開祖の最澄さんの、「己を忘れて他を利するは、慈悲の極みなり」という言葉をローマ法王が口にされたので、その場にいた比叡山第253世の山田恵諦猊下は大変感動したそうです。ローマ法王は「これまで宗教者がそれぞれ主張し合い一つになることはなかったけれど、これからは世界の平和の為に一緒に祈りを捧げませんか」とおっしゃりました。この言葉が宗教サミットのきっかけになりました。それから6年後、イタリアのアッシジで第1回目の宗教サミット、世界宗教者平和の祈りが開かれました。
カトリック、イスラム、仏教など、それぞれお祈りの方法がありますが、宗教サミットでは、その方たちが一同に会して世界の平和の為にそれぞれ祈りをするのです。
2017年、イタリアのアッシジで第30回目の宗教サミットが開催され、比叡山からは森川猊下を伴い参加してきました。そこでローマ教皇に、日本で行っている比叡山宗教サミットが来年30周年を迎えるので是非ローマ教皇に来ていただきたいとお願いをしました。ローマ教皇は日程さえ合えば行きたいと言ってくださいました。翌年は予定が合わず来日が叶わなかったのですが、本年に来日することとなり私たちはとても喜びました。来日された際には長崎・広島の原爆のことをローマ教皇から世界に広めて欲しいとお願いをしたところ、長崎・広島に訪れてくれることになりました。
本来、宗教は戦うものではないのですが、政治に利用され、戦いに引きずり込まれるということがあります。宗教者には力はありませんが、祈る力はあります。
今までばらばらだった宗教が、世界の平和を願い、一緒に祈ることができるというのは大変素晴らしいことです。
ローマ教皇が来日されたことでさらに平和を祈る気持ちが強くなり、各々がそれに向かってさらに強く祈りを捧げることを誓ったと思います。

来月は納めの月例祭ということで、護摩供養をさせていただきます。今年1年無事に過ごせたことを感謝し、新しい年が迎えられるようにいたしましょう。
以上で11月の法要を終わりにさせていただきます。