10月の法話
『諸行無常』

今回の台風26号で、伊豆大島では大変な被害が出ました。大勢の方がお亡くなりになり、まだ行方不明者の方達の捜索中という事で心からお悔やみ申し上げます。このように災害が一度起きますと大変な事になってしまいます。
昔、良寛さんは『災害に合う時は災害にあうのが良かろう、病気になる時は病気になるのが良かろう』という言葉を残されておられます。ただ、いざ目の前でこうした自然災害が起きますと頭の中では思う事は出来ても実際は動揺します。ましては被災された方々にとっては必死な思いでございます。
我々は、向こう岸で起きている事は割合冷静に見る事が出来るのですが、自分がその渦中に入ってしまった場合にどういう行動をするかは切実な問題になります。
そうなった時にやはり、一番大切なのは冷静になる事。その慌てない心を大事にしなさいよ、そんな事を良寛さんは先ほどの言葉を通して教えてくれているのではないかと思います。では、我々は普段いかに慌てないようにしたらいいか。階段を歩く時もそうですね、左右左右と一歩でも間違えたら転んでしまいます。その転ばないようにするには、左右左右と一歩一歩着実に出す事です。

昔本で読んだのですが、平安貴族の方達は、左が『貧』。右が『福』。と言いながら歩いたようです。そうすると足を間違えないのだそうです。それに引っ掛けて私も考えてみたのですが、『イチニ、イチニ』というかけ声を
「カン、ノン」「カン、ノン」と声をかえてみると観音様のお唱えが出来て、しかも足も間違えず宜しいかな。と思いました。
災害が起きますと、私の所は大丈夫かなと心配になります。仏教の教えで肝心な所は諸行無常でございます。災害がいつ起きるか分からない、起きて当たり前。我々の命もいつ途切れるか分からない。今日の健康も明日の病気に繋がる。そのように我々は絶対安心という事はないのです。まずそこに気持ちを持っていき、その上で観音様に手を合わす事が出来たら、自分にのしかかってくる色々な事が観音様のお計らいであろうと思えてきます。
例えば、今はつらいけどもうちょっと我慢して堪えよう。と思えてくるようになります。そのように気持ちを持っていれば、諸行無常も自然と心の中に入ってくるのではなかろうかと思います。
これから秋もいい季節になってまいります。紅葉などの美しい姿もいずれは枯れ果て、やがて新芽が出て季節は移ろっていきます。そのように我々も移ろいでいく。そういう事が当然の事であるというように観音様は我々を諭してくださっているなと思います。
冒頭申し上げましたように、災害に合われた方々には心からお悔やみとまたお見舞いを申し上げます。災害や病気等に遭われても、諸行無常という中で生きている。その中で観音様のからのお計らいを受けているという事を忘れずにいてください。

以上で10月の月例祭の法要を終わりにさせて頂きます。
ありがとうございました。