決まり文句でございますが、今日も暑いですね。
有名な言葉で、『心頭を滅却すれば、火もまた涼し』といいますが、これは甲斐(かい)国の恵林寺が織田信長に焼き打ちされた際、住僧快川(かいせん)がこの言葉を発して焼死したという話が伝えられています。
恐らく我々も今このように一所懸命お経を唱えている時は、暑さを忘れていると思うんですね。
ですから、人間物事に集中すると色々な事を考えなくて済むのだと思います。
でも四六時中緊張ばかりしていても身が持ちませんので、伸びたり縮んだりが生活の中にないと当然やっていけないんじゃないかと思います。
我々が普段の生活の中で緊張する時というのは、一番道近なところでは怒る時が緊張しやすいのではないかなと思います。
笑うというのは緊張の全く逆になります。
我々が普段怒るという事が、一日にどれくらいあるか? これがあればあるほど、元気なのでしょうね。
テレビを見たり、色々なニュースが耳に入ってくる度に怒るというのは、元気な証拠なんですね。
そうすると、あなたが怒るという感情もまんざら捨てた物ではないかと思います。
ただし、仏様の知恵の中では、怒りというのは三毒の一つとしていけない事になっております。
三毒というのは、貪(とん)・瞋(しん)・痴(ち)と三つありまして、貪(とん)は『むさぼる』。瞋(しん)は『怒り』。痴(ち)は『愚か』という事になっております。
そこで、我々は仏様の知恵というものを、日々の暮らしの中に取り込んでいきますと随分と暮らしやすくなっていくと思います。
今申し上げた怒りに関しても、必ず怒る理由があるわけです。
街を歩いていて肩がぶつかったなど、特に他者からの行為に関しては怒りやすいんですが、例えば家の中で家具に足をぶつけたなど原因が自分にある場合は、あまり怒りというのは出て来ないんですね。逆に自分を責める事になります。
物事の原因というものをしっかり見定めていきますと、怒りをはじめ色々な問題を解決しやすくなってくると思います。
これが知恵を活用するという事になっていきます。
我々は頭の中に知恵はあるのだけれども、その知恵を使うのを『感情』という要素が邪魔をしております。
ですから、この感情を少しでもコントロール出来るようになりますと、この知恵が多いに活用されてくるのではないでしょうか。
では、どのように感情をコントロールしていくかというと、これは昔からの言葉ですが『ならぬ堪忍、するが堪忍』とあるように、ひたすら忍(しのぶ)事が大切です。
この忍ぶ・耐えるという事が我々の感情をコントロールする一番の力になります。
そうして感情のコントロールをする事で、仏様の知恵というものを自分の中で活用していく事が出来るようになってまいります。
先ほど三毒と言いましたが、我々が持っている三つの毒をコントロールするには、まず我々の気持ちをコントロールする。その気持ちをコントロールする為にはまず忍・耐える事が第一だと思います。
耐えるという事は難しい事かもしれませんが、逆にいうといつでもすぐに出来るんです。
何か人にものを言われて、カッと血が上った時に耐える。
そうしますと、あの人はあんな事を言っていてあの人こそ大丈夫かな?と心配してあげる余裕が出てきます。
代の人はこの我慢をしなくなっているような気がします。自分をおさえると書いて『我慢』と読む文字の通り、自分を抑えるという事は感情のコントロールに繋がる事だと思います。
この暑い中で、汗をコントロールする事は出来ませんが、一つご自分の中で気持ちをコントロールして頂ければ、この暑い中でもまた違った過ごし方ができるのではないかと思います。
以上で7月の法要を終わらせて頂きます。ありがとうございました。