延命山藏山寺 平成28年11月例祭

佐藤梅屋

 お経の読み方には、三種類あります。
第一は読経(どきょう)。仏前などで、経文を、声を上げて、棒読みで唱えると
  いう読み方です。經文の意味は考えないで、ただひたすら一字一字を大切に
  読みます。自分という意識が消えて、文字と音声だけの状態になります。
  (読経三味)

第二は誦経(ずきょう)。経文をそらんじて、声を上げて読むこと。

  *諷経(ふぎん)は、大勢で、声をそろえて読誦すること。

第三は看経(かんきん)。静かな堂(室)内で、机の上に経文を開いて、意味を
 良く噛みしめながら、黙読する読み方です。
  私たち現代の日本人としては、漢訳文の経文より、その読み下しの経文のほ
 うが解かりやすい。

 法要では、漢文の観音経を読誦しました。今度は、經文の意味を理解するため
に、訓読の観音経で、正宗文の長行文の前半の部分を看経したいと思います。
 拝読しました、序文に次ぐ、総答のところで、「一心に称名せば、観世音菩薩
即時にその音声を観じて、皆な解脱を得せしむ。」に次いで、様々なレベルで起
こる苦悩に応じて、一つ一つ実に丁寧に答えられる、所調、別答で、七難の所で
は、「観世音 菩薩摩詞薩は威神のカ 巍々たること是の如し。」、三毒の所では、
「観世音菩薩は、是の如き等の大威神力有りて、饒益するところ多し。是の故に、
衆生は、常に応に心に念ずべし。」二求章の所では、「観世音菩薩は、是の如き力
有り、若し衆生有りて、観世音菩薩を恭敬礼拝せば、福は唐捐ならず。」と答え
られ、最後に「是の故に、衆生、皆な応に観世音菩薩の名号を受持すべし。」と
結ばれています。
 その後で、「若し或る人が、62億恒河沙 (無数)の菩薩たちの名を受持し、一
生涯にわたって、飲食物、衣服、寝具、医薬を供養したとすれば、その功徳はと
ても多いが、若し別の人が、観音菩薩の名号を称え、念じ、一時でも、礼拝供
養すれば、その功徳の多さは、前の人のものと全く等しいばかりでなく、百千万劫
という長い時間でもなくならないほどである。このように、観世音菩薩の名号を
受持せば、是の如きの無量無辺なる福徳の利を得ん。」と念を押されています。
 私たちは、この仏の教えを深く信じて、観世音菩薩の名号を正受し持続しなけ
ればなりません。日常の生活で、名号を受持するには、『延命十句観音經』とい
う経文を、常に、繰り返し、繰り返し、読誦することが良いと思います。
 『延命十句観音經』と言いますのは、江戸時代に、霊元院法皇(1663〜1687
・ 第112代天皇)が、比叡山延暦寺の霊空律師に、「其の文章 最も簡単で、功徳
深き經を選び出して、上覧に備えよ。」と依頼されました。律師は、一万何千巻ある
大蔵経を普く探し、その中から、わずか42字、十句から成る経を選出し、浄書して献
上した経文だと請われます。
 白隠禅師(1685〜1768) はこの經文を伝え聞いて、試みに大蔵経を捜され、
皓王観音経と云う經の中に此の文があり、禅師は感嘆して弟子にも伝えて誦さ
せ、経題に延命の2字を加えて『延命十句観音経』とし、熱心に弘められました。
更に、この極めて短い十句の観音経は、読み易く、覚え易く、
念じ易いので、それを一心に、何遍も諷誦すると、病気が治り災難を免れるなど、
様々の功徳(霊験)が現れると説いた『延命十句観音経霊験記』が刊行されました。
 また、この經は、各宗派の経典にも掲載されています。現在も、幾つかの名刹で、
平生、読誦が奨励されています。
 それでは、皆さんと共に読誦いたしましょう。

 觀世音 南無位 与仏有因 与仏有緣

  仏法僧緣 常楽我淨 朝念觀世音

 暮念觀世音 念念従心起 念念不離心