2017年 7月の法話

今回は、観音経の第3回目で、有名な観音の三十三応(現)身についてお話させていただきます。

無尽意菩薩の、釈迦牟尼世尊に対する第2問は、
「世尊よ!観世音菩薩は、云何(いか)にして此の娑婆世界に遊び、云何にして衆生の為に説法したまう? 方便の力、其の事 云何?」です。
 それに対する世尊の答えは、「善男子よ!若し国土に衆生ありて、応(まさ)に仏身を以て得度すべき者には、観世音菩薩 即ち仏身を現じて為に説法す」から始まって、「応に執金剛神を以て得度すべき者には、即ち執金剛神を現じて為に説法す」まで、「応に何々身を以て得度すべき者には、即ち何々身を現じて為に説法す」と、あらゆる階層や理念を持つ人々(33身)に対して、全く自己を空しくして、相手の気持ちや立場になりきって、いつの間にか相手を救済してしまうということを、一々、繰り返し、懇切丁寧に答えられています。
 
 経文に、次々と出てくる衆生は、
仏身・辟支仏身・声聞身    四聖(3)
梵王身・帝釈身・自在天身・大自在天身・天大将軍身・毘沙門身   天部(6)
小王身・長者身・居士身・宰官身・婆羅門身・比丘・比丘尼・優婆塞身・優婆夷身・長者の婦女身・居士の婦女身・宰官の婦女身・婆羅門の婦女身・童男身・童女身  人間(15)
天竜・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅伽・人非人等    八部衆(8)
執金剛神(1)
で、合計33身です。
 これで、三十三応神の説法は終わります。
 次にその功徳と供養について述べられます。「無尽意よ!此の観世音菩薩は、是の如きの功徳を成就し、種々の形を以て諸の国土に遊び、衆生を度脱す。この故に、汝等 応に一心に観世音を供養すべし。
 是の観世音菩薩は、怖畏急難の中に於いて、よく無畏を施す。是の故に、此の娑婆世界 皆な之を号して、施無畏者と為す。」

「汝等 応に一心に観世音を供養すべし。」とありますが、
供養の仕方は、三種あります。
一つは、敬(きょう)供養-礼拝(三礼「一心頂礼・・・」)、合掌(右掌は仏、左掌は我で、合わせて、我を空しくして仏に帰入する。南無)
二つは、経供養-読経・写経  
三つは、利供養-飲酒・衣服・臥具・湯薬や、香・華・灯明など
 これらは、勿論、一心にやらなければ、供養とはなりません。
また、「施無畏者」は観世音菩薩の異名です。その象徴が聖観世音菩薩の施無畏印です。

 最後に、無尽意菩薩は、世尊の懇切丁寧な答えに感謝して、頸に掛けていた諸々の珍宝・瓔珞を外して、観世音菩薩に供養したいと申し出ましたが、観音様はこれを受けません。重ねて受けてくださいと言っても受けられません。
 その時、世尊が、「一切の衆生を愍れむがゆえにその願いを容れて、その瓔珞を受けておくがよい」という口添えで、観音様は即時に受けられましたが、それを二分して、一分はお釈迦様に、一分は多宝仏塔に供養されました。
 最後に、世尊は、「無尽意よ!観世音菩薩は、是の如きの自在神力有りて、娑婆世界に遊びたもう。」と、締めくくられて、観音経の長行の文は終わります。

 次回は、毎回読経しております重頌の世尊偈になります。

 尚、三十三応身に因み
西国三十三所観音巡礼、坂東三十三観音、秩父三十三(四)観音
最上三十三観音巡りなどが始まったことを、もう既にご存知と思いますが、ご紹介します。
 その巡礼者の笈摺や笠に「同行二人」の4文字がありますが、その連れとは、言うまでもなく、観世音菩薩です。

 以上で、7月の月例祭の法要を終わりにさせていただきます。