2025年 3月の法話

『具足戒と梵網戒』

今年の初詣から2月の月例祭では、仏様にどういう風になるのかということのお話をさせていただいております。一度触れたことがありましたが、鑑真さんが中国から大事な戒律というものを日本に持ってきてくれたお話をしました。この戒律とは、仏様になるためどうしたらいいのか、それにはやってはいけないこと、やらなくてはいけないこと、これをきちっと守ることを教えています。 したがってこの戒律を守ることが一番なのですが、この戒律は僧侶用の戒律となっています。僧侶でなければ、守らなくても良い戒律ですね。一番簡単なのが、お酒を飲んではいけないとあります。その他に守りにくい戒律でいうと嘘をついたらいけない、これはなかなか大人になると守れません。良かれと思ってつく嘘もあります。人を陥れようとする嘘もあります。

一般の人については別にこの戒律は守らなくても良いですよということになっています。ただし、仏様になる・成仏しようとする人にはこの戒律を守りなさいということになっています。そうしますと、全ての人が僧侶になってしまったらこれはもう誰も食べていけなくなります。そうしますとこの選ばれた僅かな人たちが戒律を守り、そして成仏するのだということになる。あとの人はこの戒律は守らなくていいですよ、守らなくていいけど成仏はできませんよということになってしまいます。それはまずいだろう、誰でも仏様になれるという道がなければ仏教なんか必要ないんじゃないか。誰でも仏様になれるのが本来の仏教ではないかということで、戒律をよく調べてみると、坊さんの戒律以外に一般の人と坊さんにも共通する戒律があることが分かりました。そこで鑑真さんが持ってきた戒律と違う戒律が世に出てきたわけです。

この戒律が梵網戒という戒律です。鑑真さんが持ってきた戒律は具足戒と言います。従いまして、この梵網戒を皆が受ければ皆が仏様になれる、成仏できるわけです。梵網戒と具足戒の違いは、梵網戒は全部でやってはいけないことが58。具足戒は250あります。そして梵網戒で一番重要でやってはいけないことが10個あります。人を殺してはいけない、盗みは駄目だ、男女の交わりは駄目だ等。しかしそうなりますと結婚をしたら守れないことになってしまいます。そこで考えられてきたことが実は生きている時に梵網戒を受けるのではなく、亡くなった時に受けてもらえば絶対間違いがないということで今お葬式の時に梵網戒を授けるという形ができてきています。

今日は鑑真さんが持ってきた坊さん専用の具足戒の他に、一般の人も守れることのできる梵網戒があり、それは今ではお葬式の時に授けられているというお話をさせていただきました。

以上を持ちまして、3月の法要を終わりにさせていただきます。